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純の恋人
第11章 過去から、未来へ
「自分のした事が悪い事だって、理解してないんですね」
「残念な話だが、今外に出せば間違いなくまたお前に絡んでくるだろう。誰が見てもそんな態度だからか、検察も手を緩めるつもりはないようだがな」
まさか脱走はないだろうけれど、ここまで大事になっても何一つ変わらない彼を思うと、気持ちが沈む。国重さんは慰めのつもりなのか、また餃子を私に差し出してきた。
「でも、裁判に不安を感じる必要はないぞ。事件の性質が性質だ、被害者が証言するとしても配慮はされる。お前が土居と顔を合わせる必要も、傍聴人に顔を見られる心配もない」
今は、不器用な優しさに甘えたい。また餃子を食べさせてもらうと、国重さんは箸を置いた。
「後は、お前に纏わりついてるあのヤクザの三下が離れれば、安心なんだが」
「成実さんは、少なくとも私には普通ですよ?」
「お前に危害がなくても、あいつは反社会的組織の一員だ。芸能界で活動するのを悪いとは言わないが、あれと関わらずに歌う事は出来ないのか」
「でも……私、歌うしか脳がないんです。特に勉強が出来る訳でもないし、新しい家の家賃や生活費も払わなきゃいけないし」