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純の恋人
第11章 過去から、未来へ
テーブルに置かれているのは、大ジョッキと焼きたての餃子。国重さんは一つ餃子を箸で摘むと、向かいに座った私の前に差し出した。
「じゃ、さっそくいただきます」
食欲をそそる香りに、たまらず私は一口で食べてしまう。国重さんは満足げに頷くと、自分も餃子を口にした。
そこで私はふと気付く。今のって間接キスじゃないだろうか。よくよく考えれば、色気からは遠く離れた餃子とはいえ、異性に食べ物を食べさせてもらうなんて、まるでバカップルだ。私が意識してしまって肩をすぼめると、国重さんは首を傾げ、今度はジョッキを差し出した。
「すぐ飲みたいなら飲むか?」
「……いえ、いいです」
国重さんは、相変わらず国重さんだ。初めて会った頃に比べたら大分表情は柔らかいけれど、やっぱり無愛想だしぶっきらぼう。だからこそ、安心して食事が出来るんだけど。
ひとまずラーメンを注文すると、国重さんは小さな溜め息を漏らす。
「土居についてだが……おそらく保釈は認められないだろう。麻薬については素直に認めているが、ストーカーと轢き逃げ、誘拐に関しては話にならない。向こうの弁護士の小細工すら、自分で壊しているようだ」