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純の恋人
第3章 刑事 国重一
「それって、警察に関わると自分が大変だから逃げたんじゃないんですか? 消えたのは暴力団の人なんでしょう? だったら、逃げたくなっても仕方ないんじゃ」
「ええ、普通に考えればそれが妥当でしょうね。通報したはいいけれど、警察には関わりたくない。だから身代わりを立てる……それが表に出ないよう、金品を渡す事で通行人まで共犯にして、ね」
だとすれば、わざわざ刑事さん達が私の所へ来た意味が分からない。きっかけは私の事故かもしれないけれど、私に関係があるようには思えないのだ。
「では一つ問いましょうか。ならば暴力団の男は、どうして通報したのでしょうか?」
坂本さんに問われて、私は口をつぐむ。関わりたくないなら、そもそも私を見捨てて立ち去ればいいだけだ。暴力団の人間なら、知らない人間である私を見殺しにしたって、罪悪感はないだろう。
「実はこの事案、もう一つお粗末な事実があるんです。実は暴力団の男が身代わりを依頼したのは、敵対する暴力団の若頭だったんですよ。身代わりを頼んだ方の男は、それに気が付かなかったようですが」
「えっ?」