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純の恋人
第4章 そして誰もいなくなった
「そんな事……ある訳ない! あれは事故だ、そうじゃなきゃ……っ!」
「田中さん……待って、あくまで噂で、んんっ!」
口を塞ぐように乱暴なキスをして、田中さんは自分勝手に私の服の下を弄る。まるで口封じ。遠くを見ながらも気遣いのあった今までの田中さんとは、明らかに違う。
「やっ……くっ、んんっ!」
逃げたくて身を捩るけれど、田中さんは片腕一本で私を抑える。細身なのに、全く敵わない。胸や下半身を触られても恐怖に竦む体が熱くなる事はなかった。
「――だ、助けっ、やああっ!」
息継ぎの僅かな合間の叫びも、すぐに飲まれてしまう。けれどその微かな声は……確かに外へと届いていた。
「おい、そこの婦女暴行犯」
カーテンが開くと、冷たい声が降ってくる。立っていたのは、国重さん。今日はもう来ないと思っていたのに、彼は確かにここにいた。
「な、なんだよお前!」
田中さんは私を押さえつけたまま、国重さんに舌打ちする。すると国重さんは胸ポケットから警察手帳を出し、田中さんの目の前に突きつけた。
「俺はこういう者だ。ここの娘とは知人で、見舞いに来ている」