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純の恋人
第4章 そして誰もいなくなった
田中さんは手帳に一瞬怯むが、国重さんの胸ぐらを掴むと厳しく睨む。
「何が警察だ!! あんたらが怠慢だったから、純はこんな目に遭ったんだ!」
「こんな目とは、どんな目だ? 記憶を失った事か? それとも事故に遭った事か? いや、それが事件だった事か……または、ストーカーか」
ストーカーと聞いた途端、田中さんは拳を振り上げた。けれど国重さんは固く握られた拳を掴み、腕を捻ってベッドから引きずり下ろす。そしてうつ伏せで組み敷かれた田中さんに、国重さんは低く重い声で言及した。
「あんた、何か知ってるな? 本当に恋人だって言うなら、今すぐ口を割れ」
「――うるさいっ! 純を助けてくれなかった警察に、話してやる事なんてない!!」
剥き出しにした敵意に、私が抱くのは疑問。警察は、私を助けてくれなかった。それはストーカー被害を訴えたのに、その後も被害が続いていた事を指していたのだろうか。
『あれは事故だ、そうじゃなきゃ……っ!』
頭の中に響くのは、田中さんがさっき漏らした叫び。そうじゃなきゃ……困るとすれば? 事件になったら困るなら?