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純の恋人
第5章 三人の正体
 
「子ども返りしたお前に、仕事なんて出来るはずないだろう。こうなった以上、さっさと嫁に行って主婦にでもなった方が世のためだ。良い縁談を見つけてやるから、大人しくするように」

 子ども返りなんて、酷い言い草だ。父にとって私の記憶喪失なんて、その程度の認識なんだろう。父と仲違いした過去の自分の気持ちが、よく分かる気がした。

「分かったな」

 父は私の名前すら呼ばず、言いたい事だけ言って去ってしまう。退院の手伝いとか、付き添いとか、そういうつもりではなかったようだ。

「……ごめん、純ちゃん。オレ、あの人苦手かも」

 あまりの態度に、イドさんもつい本音を漏らしたようだ。イドさんに噛みついて来なかっただけ、まだマシな方なのかもしれない。なんて、フォローにもならないフォローだった。

 それからしばらく後、今度こそ退院のために、姉がやってくる。黒髪ストレートといった見た目同様に大人しくて、少し天然な姉。けれど父より、よほど私にとっては家族だった。

「純、遅くなってごめんね」

「ううん、大丈夫。そんなに荷物もないし、もう後は出るだけだよ」
 
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