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獣日和
第3章 浴室と淡い思い出
「桜太、はなして……」
身を捩り、桜太の両手をはなそうと強く引っ張るも、桜太の両手はがっしりとふみの腰に回されたまま、びくともしない。
それに加え、穏やかに優しい表情で桜太はクスッと笑う。
「嫌だって言ったら?」
ふみはその言葉を聞くとかあっと顔が赤くなり、俯いてしまった。
「は、恥ずかしいから……本当に、はなして……お願い……」
湯船の水滴なのか、それとも汗なのか、首筋を雫がつうっと伝う。
するとすぐにまた耳元で囁く声が聞こえると、首筋にあたたかい感触が走る。
「どうして? 俺兄弟と変わらないんでしょ? 何で恥ずかしいの? ふみちゃん」
その感触が桜太からの口付けだと気づくには、あまり時間はかからなかった。