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逆襲のフィメス
第14章 勃起堂々たる
   ※   ※    ※

 校長室にはクイーントリスともう一人、思いもしなかった客がいた。

 それは、若い「男」だったのだ。

 ラーナたちとそう変わらぬ歳ではないだろうか。異国風の簡素な衣服からスラリとした伸びた手足は、細いが筋肉質で、精悍さを感じさせる。
長く伸ばした黒髪を後ろでまとめてたらした端正な顔立ちだった。

(コイツは何だ? 校長の性奴? いや、まさか……)

 女帝エニミスを除き、フィメスの民はいかなる地位であっても、性奴を所有することは許されていない。

 そもそも性奴であれぱ服など着ているはずがない。

 そして、性奴以外の男はフィメスに存在しない。それがラーナを混乱させたのだ。

 それはソフィアも同様だった。

「クイーントリス様……その……その者は?」

 その男はと聞くのを躊躇い、遠回しな表現で尋ねる。

 クイーントリスは軽くうなずいて二人に男を紹介した。

「ローメールの使者だ」

「……カイオラルと申します」

 静かに、だが落ち着いたよく通る声で男が名乗る。

「……性奴の献上に参られたのだ」

 ローメールは海峡を挟んだ対岸にある国である。

 先の戦乱では性奴の献上と将軍の婚姻というフィメスに有利な和議を結びはしたが、属国となるには至らなかった。

「そして、帰りの出航準備が整うまでの数日、フィメスを見学させて欲しいというのだ……」

 礼を失さぬよう注意深く口にしたようだったが、クイーントリスが困惑しているのはラーナにも見て取れた。
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