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逆襲のフィメス
第16章 秘密の夜の姫
「その手紙だけを頼りに本当に使者を寄越すとはローメールも酔狂な国ですわね」

 部屋は寝所のようだった。ンニスはカイオラルの腕をとって、中央に置かれた大きなベッドの上に腰を下ろさせ、自分はその前に立ったまま話を続けた。

「……罠だとはお思いになりませんでしたの?」

 その問いかけに、カイオラルは少し考えてから答えを口にした。

「実は、ローメールはンニス様からの手紙を受け取っておりません」

 そう聞いてもンニスは表情を変えない。穏やかな、しかし心の中を読ませない涼やかな顔つきのままカイオラルをじっと見つめる。

「……あの書簡を最初に手にしたのは私でした」

 と、カイオラル。

「まあ」

「書いてある内容が内容でしたから……ンニス様のご想像通り、本気にする者はいないだろうと」

「……でも、貴方は信じたのね?」

「いいえ。信じてはおりませぬよ」

 カイオラルは小さな笑い声を立てた。
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