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逆襲のフィメス
第16章 秘密の夜の姫
 カイオラルから見て、どこか母性を欠いたフィメスの女たちに共通する印象はそこから来るものであるのかもしれない。

 フィメスにはそもそも母親という概念が希薄――というよりむしろ、皆無――であり、女たちは全て女帝の娘として扱われるのである。

 それは王女であっても例外ではなく、後継者選定の年に生まれた赤ん坊たちの中から、まじない師によって王女がひとり選ばれるのである。

 どのような歴史を経てそのような習俗が形成されたかまではソフィアも教えてくれなかったが――もしかすると彼女自身知らないのかもしれない――後継者争いによる政争を繰り返すローメールなどの各国の事情を知るカイオラルとしては、これもまたフィメスが安定した国力を維持するための知恵なのかもしれないと考えられた。

 女しか生まれない女だけの国。それが呪いなのか祝福なのかは神のみぞ知る。だが、それでも彼女たちはそうやって生き抜き今日までの繁栄を築いて来たのだ。

 それをあけ渡すとは?

 カイオラルはンニスの真意を測りかねていた。たったその一言ではローメールの政界の重鎮たちが信用するはずがない。彼自身にしてもそうだ。

 だが、カイオラルにとって、国家をうんぬんするという事より、ただその一言を運に任せて届けて来たンニスという少女の心の内に興味があった。
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