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逆襲のフィメス
第21章 白百合黒百合
 高められ、潤んできた瞳にかつてのライバルの顔が滲む。
 見つめられている。

 それは、いつもソフィアの次席に甘んじ、敵愾心に燃えていたあの瞳ではなかった。

 優越し、罠にかかった小鳥を召し取る狩人の目つき。

「駄目……駄目よ、ラーナ……駄目……私には……」

 乱された上衣の前をかき合わせるようにして、少しでも素肌を隠そうとするソフィア。

「……お前には恋人なんかいない。クイーントリスは違う。心に決めた相手だったら精夜祭に傍にいさせるはずだからな……」

「い、言わないでっ……」

 そう。
 それはソフィアにとって泣き所だった。

(クイーントリス様……どうして私をお傍に置いてくれなかったのですか……)

 わかっている。
 自分が好かれていないわけではない。
 嫌われているわけではない。
 ただ、フィメスの大将軍は祖国の為にしなくてはならいことが多すぎるだけなのだ。

 そして、その将軍の命であるならば、傍を離れて辺境への任務にも赴こう。それが、彼女を慕うソフィアに出来る精一杯の手助けなのだから。
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