この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
逆襲のフィメス
第1章 プロローグ 夜の始まり
「おい」
若者たちの集団のどちらもが、それ以上競り合えないのを見て取って、ボーイに向かってひと声し、フードの人物が金貨を放る。ロマ金貨。すなわち、10000テグだ。
慌てて思わず金貨を床に取り落としそうになったボーイを尻目に、最後の舞い姫の方はさすがに堂々とした様子で、腰を優雅にゆらしながらステージを降り、今宵の主となった客の前に立った。
「大勢にされるのも嫌いじゃないけれど、一人のお金持ちさんのほうが素敵ね」
「……座れ」
媚びた口調を無視してフードの奥から低い声が命じる。女の方もその態度にいささか面食らったはずだが、そんな気振りは露ほども見せず、寄り添うようにその隣りに腰を下ろす。
だが、客はしなだれかかる彼女からすかさず身を引くと、意外な言葉を発した。
「そこに、座るな」
これには女もさすがに目を丸くした。そんなことを言われたのは初めてだ。どんな男だってこの艶めかしい肌の温もりに、一瞬でもいいから触れたいと躍起になるというのに。
若者たちの集団のどちらもが、それ以上競り合えないのを見て取って、ボーイに向かってひと声し、フードの人物が金貨を放る。ロマ金貨。すなわち、10000テグだ。
慌てて思わず金貨を床に取り落としそうになったボーイを尻目に、最後の舞い姫の方はさすがに堂々とした様子で、腰を優雅にゆらしながらステージを降り、今宵の主となった客の前に立った。
「大勢にされるのも嫌いじゃないけれど、一人のお金持ちさんのほうが素敵ね」
「……座れ」
媚びた口調を無視してフードの奥から低い声が命じる。女の方もその態度にいささか面食らったはずだが、そんな気振りは露ほども見せず、寄り添うようにその隣りに腰を下ろす。
だが、客はしなだれかかる彼女からすかさず身を引くと、意外な言葉を発した。
「そこに、座るな」
これには女もさすがに目を丸くした。そんなことを言われたのは初めてだ。どんな男だってこの艶めかしい肌の温もりに、一瞬でもいいから触れたいと躍起になるというのに。