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ただ一つの一対
第9章 ただ一つの一対
外は明るく晴れているのに、空からはちらちらと雪が降っている。珍しい光景に、菖蒲は窓に両手を付いて外を眺める。そうしていると静かにドアが開き、菊が肩から血を流しながら入ってきた。
「――叔父さん、どうしたのその傷!? まさか、お父さんが?」
「いえ、これは別件です。大丈夫、死にはしませんから、話をさせてください」
「待って、その前に先生呼ばなきゃ」
「呼ばれたら、話す前に監禁されて絶対安静にされてしまいますから」
「じゃあ、せめて叔父さんがベッド使って。あたし、こっちに座るから」
菖蒲は見舞い客用の椅子に座り、ベッドを指差す。菖蒲の具合も気になるが、菊は素直に受け入れベッドへ横になった。
「体は、大事ないですか? どこまで、先生に聞きました?」
「――うん。体は大丈夫。精神にショックを受けたのと、ベッドから落ちた衝撃でちょっとお腹痛くなったみたい。私も……お腹の子も、問題ないって」
「……そうですか」
「ごめんなさい、あたし、全然気付かなかった。確かに最近具合悪かったけど、生理不順の影響かなって思ってたの」