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ただ一つの一対
第2章 少女は夢を見る
 
「叔父さんはずるいよ、分かってるくせにそういう事するんだ」

 だが、女の瞳は、子どもの慰めで輝きはしない。むしろそれは自尊心を酷く傷付けたようで、菖蒲の目には涙が浮かんだ。

 ただの女が相手なら、菊は一蹴し見捨てただろう。だが、相手は可愛がってきた姪だ。泣いていると、庇護欲が駆り立てられる。泣き止ませる方法は非道であると分かってはいても、涙を見たくない一心でつい甘やかしてしまった。

 菊は菖蒲の手を引き路地裏に回ると、何の建物かも分からない壁に菖蒲の背を押し付ける。そして顎を取ると、片倉にしたように食らいついた。

「っ、んぅ……!!」

 遊びの女と同じように容赦なく責め立ててから、菊は気付く。慣れている女と違い、菖蒲はあまりにたどたどしい。息遣いすらままならない幼さは、背伸びしても菖蒲はまだ少女だと証明していた。

 だが、欲に火を付けたのも菖蒲自身である。初々しい少女の味に、菊もまた冷静を失っていた。手を緩めるどころか、菖蒲の腰が砕けるまで、深く荒く貪る。

「んっ、く……!」

 菖蒲はずるりと崩れ落ち、地面にだらしなく尻餅をつく。菊はこぼれた唾液を舌で舐め取ると、真っ赤になって息を荒げる菖蒲を横抱きにした。
 
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