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ただ一つの一対
第2章 少女は夢を見る
「……叔父さん? なんか変だったかな、あたしのやり方」
「い、いえ、完璧ですよ。さすが慣れていますね」
安心させようと笑んではいるが、菊は菖蒲と目を合わせようとしない。何が不服なのだろうと、菖蒲は菊の足を握ったまま考える。だがそれはすぐに、別の思考へと変わった。
「……こうして見てみると、叔父さんちゃんと練習してる人の足だね。このあたり、皮膚が固くなって――」
剣道を習っていると、足は豆になったり水膨れが出来たりとトラブルも多い。菊の足にはその爪跡が確かに残っていた。何気なく足先の方に指を伝わせると、これまで以上に菊の足は跳ねた。
「ひゃあっ!!」
「すいません、体が勝手に……その、足は敏感な部位ですから、なるべく手を触れないでいただけると助かるのですが」
「あ、叔父さんくすぐったいの苦手なんだ。ちょっと意外」
「くすぐったいのが苦手な訳ではありません。少し敏感なだけです」
強がっているが、菊は我慢の溜め息を漏らして身を捩る。通常ならまず見られない姿に、菖蒲は小さな悪戯心を抱いた。