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ただ一つの一対
第2章 少女は夢を見る
あからさまにくすぐれば怒られるだろうと踏んで、指でなぞるように弄る。
「――菖蒲、これ以上やると怒りますよ」
菊の頬は高揚して、大人の余裕もなくなっている。熱のこもった瞳は、先程のキスを思い出させるようで、菖蒲は手を離し高鳴る胸を押さえた。
「ご、ごめんなさい」
「まったく、どうも今日のあなたは悪い子ですね。何か変なものでも食べましたか?」
「何も食べてないよ……あ、そういえば、お昼ご飯!」
菖蒲は立ち上がると、何事もなかったかのように菊へ声を掛ける。
「今あっため直してくるね、一緒に食べよ」
慌ただしくキッチンへ向かう菖蒲の背中を眺め、菊は一人溜め息を漏らす。
「足なんて、性感帯ではなかったはずですが……」
菖蒲に煽っている自覚がないと分かっていても、内でくすぶる欲は止められない。ましてや菖蒲の中にある女を引きずり出した後だ。満月に抗えない狼男のように、菊の本能は乱れに乱れていた。
菊は兄の姿を頭に浮かべて煩悩を振り払うと、深呼吸して気を落ち着かせる。菖蒲が戻る頃には、再び叔父としての分厚い仮面を被っていた。