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ただ一つの一対
第1章 失恋した男
「ふ……あ、イっ……くぅうっ!」
びくんと背中を反らすと、女は食いちぎるほど中の力を強めて痙攣する。菊はそんな女の耳元で、挑発的に囁いた。
「もう達してしまったのですか? すぐ暴発したのでは、楽しめないでしょう?」
「――それはっ」
「いえ、女性相手の場合、オウム返しは間違いですね。あなたが達すれば、ここはより強く締まって、いい刺激になる。何度でも暴発してもらいましょう」
達したばかりで息も整っていない女に、再び擦れる刺激が与えられる。待って欲しい、などという恐れは、口に出すことなく濁流に飲み込まれた。
「さて、僕が一度達するまでに、あなたは何回暴発するでしょうね?」
過ぎた快楽は、体をバラバラに壊していく。しかしこの責め苦も、甘い時間に勘違いを起こした女の不手際だった。一文字 菊という男が、女一人でうろたえる事などない。夜を支配する男を、たった一人の女が捕まえるなどそもそも不可能なのだ。
「もう止めてっ……いやああーっ!!」
防音に優れた自身の部屋に、男を呼んだのも女である。叫んだところで、助けが得られる事などなかった。