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ただ一つの一対
第3章 ただ一つの欠陥
「説明? 大事な大事な取引があるっつうから、俺が自ら出てやったんだ。感謝こそすれ、怒鳴られる筋合いなんかないだろうが」
「その件は、僕が左月に一任したはずです。なぜあなたが出しゃばるのですか」
「ああ? トップがわざわざ出てやったんだ、向こうにとっても最大の敬意だろうよ」
「百歩譲ってあなたが出た事は不問にしても、なんなんですかこの内容は! 僕が進めていた契約と、まるで違うじゃないですか」
すると則宗は菊の胸ぐらを掴み、こめかみに銃を突きつける。
「テメェは何様のつもりで俺に口聞いてんだ? 調子こいてると、脳天ぶち抜くぞ」
「……やれるならやればいい。今の一文字組を、僕の手腕なく支える自信があるならば」
いかにもな風体の則宗に、菊は銃口のように冷たい瞳を向ける。しばらく睨み合っていたが、則宗は銃で菊の頬を殴りつけると怒鳴った。
「――黙れっ!! テメェなんざ、宗一郎がいれば!」
菊は血の混じる唾を吐き捨て、乱れた襟を正す。
「そんな醜い態度だから、お兄様に見限られるんですよ。いなくなった人間にいつまでも固執して、気持ち悪い」