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ガラスの靴がはけなくても
第8章 眠りたくない夜
迎えにきてくれた部長は私の行動なんてお見通しで近くのパーキングで待っていたらしい。
手を引かれて車に乗せられてもなお泣き止まない私を見て、何故だか満足げに笑う。
「なんでっ、そ、そんなに笑うんですか!?」
ぐしゃぐしゃになった顔を精一杯鋭くして睨みつけるけど、さらに笑うばかりで余計に腹がたった。
「いや、嬉しいなと思って。俺のために泣いてるんだろ?」
そう言って私の涙を親指で拭うから、腹がたつしもう泣き止みたいのに嗚咽が出るくらいに泣けてくる。
「そうです!部長のために…、部長の前だから泣いてるんです!」
「前に泣いてた時は違う男のことで泣いてたのになぁ」
「なんのことですか?そんなの覚えてません」
「覚えてないなんてずるいな」
「女なんて都合がいいように出来てるんです。好きな人ができたら、昔のことなんて全部忘れるんですよ」
私がこんなに泣けて感情を出せるのは部長の前だけ。
今、こんなに泣けるのは部長を想う気持ちが止まらないから。
「私、部長が好きです!大好きです!」
その言葉を待っていたかのように、優しい笑顔を向けてとびきり優しいキスを私にくれた。
「俺の勝ち」
不敵に笑う部長にはやっぱり敵わない。