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再愛
第2章 君と刻んだ時
この関係は、始まりも終わりも歪んだ心が行き先を決めているに過ぎない。

歪んでいても、『好き』という感情に支配され、無責任にもなれたりする。


蛍はいつも時間に追われていた。
仕事に家事に子育て。
一見、子供がいるように見えないくらい、生活感のない女だったが、9歳になる女の子が居ると聞いた事がある。

「鍵を持たせたらね、
ちゃんと留守番するのよ。
大人になった気分らしいの。
私もだいぶ助かってる。
こうして、自分の時間が出来たわ」


「9歳で留守番か……
偉いな」

「偉いけど、可哀想。
可哀想だけど仕方ない。
私だって、こういう時間がないと、優しくなれない。
生き甲斐がないと…
やってらんないわ」

「蛍はよくやってるさ」

「やるしかない環境だからよ。
私が一番似合うのは専業主婦なんだけどな…」

君は珈琲を飲みながら、
愚痴と弱音を少しだけ吐く。

俺は、仕事柄、管理職を任され、来る日も来る日も部下になる者の教育をしてきた。
愚痴や弱音を吐かれても、流せる体質。

ほぼ毎日、はっぱをかけたり、怒鳴ったり、教えても成果の上がらない部下の面倒もみてきた。
時に、嫌われたり、憎まれたりしながらも…

『鬼の杉下』と陰口も叩かれているのは、知っている。


上司になれば部下に厳しくしながらでも、仕事を教えていくもんだという、使命感から鬼にだってなった。

嫌われても憎まれても仕方ない…って。
その仕方ないの諦めの心が、いつしかストレスにもなっていた。

だからかな…
せめて君の前だけは、物分かりのいい、カッコイイ男を演じていたかった。

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