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第3章 君を知る

逸る気持ちを抑えきれず、
あの場所のベンチに駆け寄った。

ベンチに座る一人の女性。

蛍…

帽子を被っていたので、ベンチに座る女性が蛍なのか？
いまいち、俺の立ち位置からは、判明が不可能だった。あのベンチで待つと、メールにも示されていたのもあり、そっと歩み寄った。

俺が近寄ると、帽子の女性もこちらを振り向いた。

残念ながら、蛍ではない。
蛍より、ずっと若い女性だ。

その女性と目が合ってしまい、戸惑う。

蛍は何処だ？
トイレにでも行っていて、ベンチを離れたか？

帽子の女性が立ち上がった。


あんまりにも、俺がガン見したから、気分を損ねた？
俺は気まづくなり、『すみません』という気持ちで会釈をした。

女性は俺の顔を見て、会釈を返す。

俺は、申し訳ないので、その場を一旦去ろうとした。
が、その時、その女性に声を掛けられた。


「あの……
もしかして、杉下哲朗さんではありませんか？」


『はぁ？何故、俺の名前⁉︎』