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第3章 君を知る

「最初から、里中で名乗るべきでしたね」

樹良と名乗る女性は、そう言って、はにかんだ様な表情を浮かべて俺に近づいてきた。

近づけば、近づくほど、散りばめられたパズルのピースが一つに纏まりかけてゆく…

広いつばの帽子を被り、栗色のストレートのロングヘアーに、目、鼻、口はくっきりとしていて、整ったパーツを備えた顔。

清楚で胸元に大きめなリボンの白いブラウス、黒のロングタイトスカートに、短めなブーツ、黒の短めな丈のジャケットを羽織っている。モノトーンのファッションが、彼女の美しさを余計引き立たせていた。

笑わなければ、キツめな美人。

くっきりとした二重瞼は母親譲りなんだろう…
樹良の顔に、蛍の面影が残っていた。


「君は……里中さんの…」

「娘です。
秋吉樹良と申します。
里中は母の旧姓になります。
驚かれたでしょ？
無理もありませんよね」


驚いたところじゃないさ、
頭が真っ白だ。
上手くこの状況を飲み込めない。

俺は呆気に取られたポカン顔をしていたに違いない。