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再愛
第5章 fake
少し、酔った身体で帰宅する。


「あら、今日は早かったのね」

リビングで雑誌を見ていた妻が話し掛けてくる。

「あぁ…少し風邪気味らしい。
部下と少し飲んでたんだけど、先に上がってきた」

「あら、そう。
大丈夫なの?
圭ちゃんに移さないでね。
今、大事な時なんだから」

「部屋に居る。
圭太に移すと大変だからな」

「あなた…ご飯は?」

「食欲ないんだ」

「あらそう。ビーフシチュー作ってあるのに…」

「悪いな。
明日にでも頂くよ。
調べものもあるし、部屋に行くよ」

「そうね。
圭ちゃん、今、塾だから、移らないうちにね」

「あぁ」

我が家の一人息子の圭太は、来年、大学受験を控えていた。

俺の身体より、圭太の受験か…
お前の今までの成果の見せ所だもんな。

圭太は、幼い頃から妻に仕組まれたエリートになる道を歩むべくカリキュラムをセッティングされ、習い事や塾を嫌がらずにこなす、よく出来た優秀な息子。
嫌がらずに最後でやり遂げる事まで洗脳され、逆らわずに当たり前の様にこなしている。

時々、圭太の瞳を見ていると、覇気が無く、そうする事が自分の幸せであり、母親の喜びであると、信じて疑わず、良い子で居ようとし、まるで精密に動くロボットの様だ。

子供は子供らしく、外で元気になどという、普通の育て方には納得せず、裕福な妻の実家は、圭太の才能を伸ばすとやらの資金が義父から惜しみなく援助されてた。

「あなたには迷惑掛けないわ。
でも、圭太にはそういう道を歩ませたいの」

圭太が生まれてから、見栄っ張り妻の自分本位の愛情は、圭太に全て注がれた。

俺は、いつしかこんな家庭が息苦しくなった。
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