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再愛
第6章 再愛
青空に雲が浮かぶ、遮光カーテンの隙間から、ほんの少しだけ日差しが入り込む。


『あと、もう少し』
私は、また目を閉じた。


そのもう少しが、やがてやって来る。
ベッドサイドの目覚ましが、6時半ぴったりに小鳥の囀りのメロディーを奏でる。

朝が来た知らせを受けた私は、目を開けて起き上がる。

ダブルベッドの隣で眠る夫と、同じ朝を迎える。


「夏海(なつみ)
誕生日おめでとう」

眠そうな目をしながらも、起きる準備をし、笑顔を向ける夫。


今の私、
とても幸せ。
自分の誕生日を、ちゃんと覚えていてくれて、
一番に「おめでとう」と言ってくれる人が隣に居る事。


それでも、振り返ってしまう…

自分の誕生日を祝ってくれた過去の男の存在や、ベッドを共にし、愛の営みを交わした男を…

女は想い出に生きる。

時に、想い出の中に逃避し、現実の厳しさに立ち向かう盾となり、自分を守ろうとした。

再び愛する男に出会うと、想い出を、そっと胸の奥底に仕舞い込みながらも、脇目も振らず、一心不乱に飛び込み、愛を奏でる女となる。

女は、変幻自在に愛を探し、過去の恋を心の額縁に飾り、心の黄昏れ時と共に、そっと眺めて愁いに慕う。

そういう狡さをひた隠しにし、したたかに生き、平静を装っいつつも、メラメラと炎のように燃え滾る情念すら、目覚めさせてしまう、厄介な生き物なのかも知れない。

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