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嫌なのに……
第7章 東京
会社には寮があった。
古いが、会社の隣に建っていたので夜遅くなっても不安はなかった。
寮には地方出身ばかりの女性だけ。
何より亜海を知らない人ばかりなので、亜海の心は安らいだ。
ここには自分の過去を知るものは一人もいない…
まさか、誠もここまで来たりはしないだろう。
傷付いた心も見知らぬ地に来た不安も、優しい先輩や楽しい同僚のおかげで少しずつ癒された。
この2年で亜海はだいぶ明るくなった。
だが、今日不安を抱えて亜海は寮を出る。
木造の寮は老朽化が進み、建て直しすることになったのだ。
仮の寮として小さなマンションを会社は用意したが都内では手配出来ず、郊外から通うことになる。
何年も勤めている先輩達の多くは都内に独り暮らしを決めたようだ。