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嫌なのに……
第7章 東京
亜海にもこの2年で独り暮らしをするだけの貯金くらいはある。
だがこの見知らぬ都会でその勇気はなかった。
遠くても寮の仲間と郊外のマンションに移ることを決めたのだ。
通勤手段は電車で1時間半ほど。
まだ経験したことのない満員電車の事を考えると、憂鬱だね…と同僚と溜め息をつくのだった。
引っ越し業者のトラックに乗り込み、亜海達は新たな住み処へと出発したーーー
「うわ…田舎だね…」
亜海と同期の佳江(ヨシエ)が呟く。
駅から近いが、駅の周りには大きなモール等はなく、スーパーに商店街…食堂に飲み屋がポツポツ。
住宅地が少し広がっているが、その向こうには山が連なっている。
都会に慣れてきた亜海達には、田舎に見えた。