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写性 …SHASEI…
第18章 日常
「ねぇお父様…私が生まれた日の話をして?」
10歳の誕生日に言われる。
その日…
互いに触れずにいた日の記憶。
でも、沙絵には知る権利がある。喜びと悲しみ、生と死が向かい合うその日のことを沙絵に話した。
「沙織が結婚した家から追い出され、体調を悪くして病院にはいり、お祖父様から逃げるようにして僕のところに来たのは知ってるよね。」
「うん…」
「具合が悪くて沙織はだいぶ痩せてしまっていた。
冬になると風邪をこじらせて寝込むことが多くなった。」
「うん…」
「僕は早く春になればいいと思ってた。
春になって少し良くなっていたんだ。
沙絵が生まれる予定の日よりだいぶ前にね。
沙絵がいるのはお腹の中の水の中なんだけど、その入れ物が破れてお水が出てきちゃったんだ。
僕たちは急いで病院に行った。沙織はすぐに赤ちゃんを産む部屋にベッドのまま運ばれたんだ。」
「うん…」
「僕は部屋の外で待たされた。何がどうなってるのかわからないままだった。お水が出ちゃったら、すぐ生まれるようにしなきゃならないって沙織に言われてね。
ああ、赤ちゃんが生まれるんだなって…
それしかわからず、長いのか短いのかわからないまま、ずっと待っていたんだよ。」
10歳の誕生日に言われる。
その日…
互いに触れずにいた日の記憶。
でも、沙絵には知る権利がある。喜びと悲しみ、生と死が向かい合うその日のことを沙絵に話した。
「沙織が結婚した家から追い出され、体調を悪くして病院にはいり、お祖父様から逃げるようにして僕のところに来たのは知ってるよね。」
「うん…」
「具合が悪くて沙織はだいぶ痩せてしまっていた。
冬になると風邪をこじらせて寝込むことが多くなった。」
「うん…」
「僕は早く春になればいいと思ってた。
春になって少し良くなっていたんだ。
沙絵が生まれる予定の日よりだいぶ前にね。
沙絵がいるのはお腹の中の水の中なんだけど、その入れ物が破れてお水が出てきちゃったんだ。
僕たちは急いで病院に行った。沙織はすぐに赤ちゃんを産む部屋にベッドのまま運ばれたんだ。」
「うん…」
「僕は部屋の外で待たされた。何がどうなってるのかわからないままだった。お水が出ちゃったら、すぐ生まれるようにしなきゃならないって沙織に言われてね。
ああ、赤ちゃんが生まれるんだなって…
それしかわからず、長いのか短いのかわからないまま、ずっと待っていたんだよ。」