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第19章 来訪者

たまに廊下での話し声が聞こえるのと、朝と午後にインターホンがなるくらいで、実際しばらくは何も変わらなかったのだ。


何日かしてお父様がため息ばかりつくようになる。

｢お父様、どうしたの？｣

｢いや、絵を習いに来ている人がね、絵を描いて欲しいと言い出したんだ。｣

｢描きたくないの？｣

｢そうじゃないけど、｣

｢じゃあ描いたらいいんじゃない？｣

｢そう、沙絵は構わない？｣

｢なんで？私には関係ないし…｣

この時もお父様が悩む理由がわからなかった。


お祖母様からお父様の話を聞いて、私が一気にお父様に惹かれたように、
出会おうとしたわけでなく突然訪れたその人に心を奪われて戸惑っているのだと気づかなかったのだ。


その人が来て楽しそうにしているお父様を見ていたし、私との愛は今までと変わらなかったから…




私がアトリエに入るのは、誕生日、お母様を偲ぶ２回、クリスマスくらいで、

七五三の着物で描かれたお母様と私の混ざった絵が、奥の隠し部屋に追いやられていたのにも気づかず。

そこにあの人の絵がどんどん増え続けているのも知らなかった。