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第21章 猫

まずい…

お父様は気づかなかったが、お父様を見上げているあの人と目が合ってしまう。

｢きゃぁあああ｣

私は廊下を走って逃げる。

｢部屋にいなさいと言ってあるでしょう。｣

追いかけてきたお父様に捕まった。

｢あの人を放っておいていいの？｣

｢沙絵、悪かった。もうすべてを話すよ。
沙絵とも後でゆっくり話そう。｣

｢お父様は私よりも、お母様よりもあの人を愛しているのね。｣

お父様は俯いて返事をしない。

｢部屋に戻っていなさい。後で話そう。｣

辛そうな顔をしてあの人のところへ戻っていく。

私も自室へと戻った。

バタバタと音がしてしばらくするとアトリエに二人で行ったようだった。

あの人にすべて話す。
どうなるのだろう。
考えても仕方ない、私は布団に潜って寝てしまった。

また夕食になって起こされる。黙って食事を済ませたあと、お父様が話し出した。


｢あの人に沙絵と沙織のことを話したよ。｣

｢そう。｣

｢明日、あの人が今まで通り来たら、沙絵を紹介すると話したよ。いいね？｣

｢はい。｣

お母様や私はどうなってしまうのか、
聞きたいけど、はっきりするのも怖い。


｢お話はそれだけ？｣