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第38章 羽化

｢ん…さ…沙絵｣

｢気がついた？少しでもいいから食べて、薬を飲みましょう。｣

手を握り返したお父様がハッと目覚めた時の寂しそうな表情。
いずみさんじゃなくてがっかりしたのかな。

キッチンに向かいお粥を作った。

人には無理にでも食べさせるのに、お父様は少し食べて薬を飲んで寝てしまう。

こんなじゃ、アメリカに行けない。
いずみさん…お父様をまだ愛していますか？


寝付いたお父様を置いて屋敷を出る。
いずみさんはどうしているだろう。


｢ママ〜お買い物行こう。遠足のおやつ選びたい。｣

いずみさん家から男の子が飛び出してきた。
慌てて追いかけるように、いずみさんが出てくる。

子供が出来たんだ。
私は下を向いて歩き、二人とすれ違う。

｢ママ〜年長さんはおやつ３つまでいいんだよ〜｣

｢実(みのる)も、もう年長さんだもんね。３つまでね。｣


私に気づいたらとドキドキしながらすれ違ったが、いずみさんは、子供を見ていて全くこっちを意識していなかった。


男の子…実くん…年長さんって、六歳くらい？

あの日からすぐくらいに妊娠していたということ？

だから、家族が大事だからうちには来ないの？