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写性 …SHASEI…
第39章 桜
いずみには沙絵がアメリカに行った後でいくらでも説明出来る。

それより今は、旅立つ沙絵を大事にしなければ…

ドアがノックされた。

きっといずみだろう。

「どうぞ、
貴女の椅子を用意したから、これを仕上げるまで待っていてください。」

僕は作品に取り組んだままいずみに話しかけた。

振り向いて貴女を見たい。でもそうしたら抱き締めてしまうだろう。

今はそれは許されていない。これは、僕といずみの愛を確かめさせたいと言いつつも、沙絵への僕の愛情のテストなのだ。



ワタシは少し離れた場所に用意された椅子に腰掛けた。

先生は振り向いてもくださらず、筆を進めている。
ワタシからは先生の背中と、色を取る時に僅かに現れる手しか見えなかった。


なんで、八年もの間を置いてしまったのだろう。
先生も沙絵さんも置いて、逃げ出したままにしてしまったのだろう。


絵を覗いたり、先生に近づくことが赦されない雰囲気を感じ、ワタシは涙を流していた。



私は客間に入って二人の様子を窺った。再会した二人は、訳も分からず悩めばいい。
簡単には許さない。

あの日からの私たちの苦労も、何もかも置き去りにして知らないのだ。

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