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写性 …SHASEI…
第42章 犬
いずみさんの髪を鋤き始めてごまかした。
今必要なこと、それはご主人への対策だ。

「お父様の名前、しばらくは知らない方がいいわね。」

「何故ですか?」

「愛してるんでしょう?知らないうちに口走ったら、大変なことになるでしょ?
これは意地悪で言ってるんじゃないわ。」

髪を優しく鋤きいずみさんが落ち着いて話を聞いてくれるように気遣う。

「ありがとう沙絵さん。」

「ご主人に求められても、無理な時は断らなきゃだめよ。

心も体もダメになっちゃうわよ。」


飲み終えたカップを置くようにと、沙絵さんがソーサーを出してくる。

「すみません。」

「いずみさん、奴隷としてはいい返事だけど、謝ってばかりじゃだめよ。」

「はい?」

「日本人は謝りすぎなの、ありがとうで済む場合は、すみませんて言っちゃだめよ。」

お父様が洗面器やタオルなどを持って戻ってきた。

「お父様、お薬塗ったりするから、しばらく外してて。」

「そうだね。」

お父様は少し落ち着いたいずみさんを見ていた。

「じゃあ沙絵、いずみを頼んだよ。」

そう言ってお父様はアトリエを出ていった。
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