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写性 …SHASEI…
第50章 出発
互いに耳に唇を寄せ囁きあい、話の内容はわからないが、交互に近づける唇がいつ重なってもおかしくない雰囲気だ。

男同士の愛の囁き、逞しい体に女性のような柔らかさはないが、美しいと思った。

シャッターに指がかかり、その美しい瞬間(とき)を切り分けていく。

いつ二人の唇が重なるのか、私は二人の恋人という意識より、その美を見届けるカメラマンとして、それを待ちわびた。

ジョンがボブの体を引き寄せ覆い被さる。
ここからでは横からのアングルは狙えない。

でも捩れて重なり合う二人の姿だけでも捉えたいと指が動いた。

シャッター音はしない。連続する仕草をカメラが切り分けた。

もう一歩中に入れれば…

「Sa〜e〜
カモーン」

日本人の英語っぽくジョンが言う。私には完全に背を向けているはずなのに、しっかりと見られているようで、肩越しに出された人差し指をクイクイッと曲げ、招く仕草をする。

ジョンが顔を横にずらすとジョンで私が見えなかったはずのボブまでニヤッと笑っていた。


「子猫ちゃん、黙って撮るのは構わないけど、必ず撮った写真は見せてね。」
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