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写性 …SHASEI…
第9章 朝顔
バケツに割りばしやゴミ袋、軍手を入れて買い物かごのように揺らしながら、沙絵は裏庭に行った。

僕は外用のテーブルを出して道具を広げた。

サルスベリの枝に巻き付かせた朝顔を描いていく。
蔓を巻き這い上がるような勢いを留めていく。

白っぽい皮が剥けたような樹肌のサルスベリの幹と爽やかな黄緑の蔓を色付けた。

少し濃い目の緑で葉を描いていく。

沙絵が覗きにこない。
大抵飽きて様子を見に来るのに小一時間、絵に没頭していた。


花の色付けの前に沙絵の様子を確認しよう。
静かに向かい沙絵を覗いた。

「ぅふ…また居たわ、悪い虫さん。」

割りばしでキャベツについた虫を取る。
地面に落として踏みつける。

プチッ…

「この音、楽しい。」

「あっ…また居たわ。ふふっ…」

プチッ…

「悪い虫さんバイバイ」

踏み潰す時の沙絵の顔は妖しく微笑んでいた。

害虫だから仕方ないのだが、どうみても虫を楽しんで潰す沙絵の笑みが怪しい。

「沙絵?」

「お父様、キャベツに沢山虫が付いてしまったの。」

先ほどまでの怪しい顔はなくなり、普段の表情に戻っていた。

垣間見る沙絵の加虐体質にドキッとした。
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