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痴漢脳小説 ~秋津高校サッカー部~
第1章 弱小サッカー部
 中井君が着替えてきて、人数を同じにするために俺が抜けることになった。
 キャプテンとして新入部員の実力を見たいから、とかもっともらしい理由をつけてみたが、要は俺も美緒ちゃんに近付きたかったんだ。

 自慢じゃないが俺だって彼女はいない。うん、言ってはみたものの本当に自慢じゃないな。
 去年少しだけ付き合った女の子はいたが、まさにひと夏の恋。他の学校の子とのお付き合いは、お互いの金銭的事情もあってすぐに終った。

 だって会うのにも交通費がかかるんだもん。金のない高校生、デートも満足に出来やしない。

 結局その子は同じ学校の男子と付き合うことになって、俺はふられた。
 別れ際に「もっと頼もしくて面白い男の子になってね」と言われた。

 あれ、金銭的事情は?

 確かに、頼もしさなんてものは俺には欠けているかもしれない。
 キャプテンをやっているのも、俺の性格のせいだ。

 事なかれ主義で争いごとを嫌う。そんな性格だからキャプテンを押し付けられた、と言ってもいいかもしれない。
 強烈なリーダーシップなんてものには縁遠いが、一応人並みに持っている調和能力というのがキャプテンに向いているのか、とりあえずサッカー部は問題なく無事に二年目を迎えている。

 …まあ、俺の薄い恋愛経験や、情けない性格の分析はともかく。

 今は新入生一可愛い美緒ちゃんが隣にいる。
 俺の作戦とは、後半開始からベンチで美緒ちゃんと並んで観戦することだった。
 なんせ前半だけで二得点。アピールは十分に出来たはずだった。

 美緒ちゃんは意外にも、嬉しそうに俺と並んで座ってくれた。

 ここまでは完璧だったんだ。

 ここまでは。

 俺の代わりにグラウンドに立った中井君があんなに活躍するとは思わなかったんだ。

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