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第8章 準決勝　武蔵西武戦

　その山西が交代早々守備で貢献する。
　ボールを受けた永友の前を塞ぐ。少し距離を開け、一息で抜かれない距離。この状況では永友は前ではなく横に切れ込もうとする。攻めあぐねている今ならなおさら、最短距離でゴールに向かおうとする。一点差をギリギリ守っている今ならきっとそうなる。

　そこをタモツと二人で挟め。

　池内からの指示はそれだった。

　前を山西が塞ぎ、横にはタモツが詰める。高いキープ力も持つ永友だが、スタミナの落ちてくる後半、さらに向かい合う山西は北村よりも守備が上手い。
　山西の足が伸びてボールにかする。それを素早くタモツが拾う。

　相手の体力だけでなく、心理状態まで呼んだ完璧な作戦だった。

　ボールはヤスへ。同時に前へ走るオカ。
　カウンターを警戒して左に寄る武蔵西武DF。

　ヤスが大きくボールを蹴りだした。受けたのはオカではなく、トップ下のヒデ。
　ヒデが走り出す。相手のボランチ長谷川をかわし、さらに前進。そこにDF七澤が詰め寄る。

　ヒデはボールを右に流す。そこにいるのは俺。左寄りになったDFの目をさらにヒデが引き付け、ガラ空きになった右サイドを俺は走る。

　慌てて駆け寄るDF小間野をフェイントひとつで置き去りにする。

　甘いよ。俺がいつも相手にしてるのは日本代表レベルだぜ。
　いくら強豪のスタメンDFとはいえ、スタミナの落ちてくるこの後半、さらにそんなおっとり刀のディフェンスが俺を止められるわけがない。
　逆に俺はこの瞬間のため、体力を温存しておいた。まだまだ俺の足は軽い。

　俺の前にはDF田丸とGK川嶋のみ。

　詰め寄る田丸をヤマとのワンツーパスでかわす。
　ゴールキーパーをしっかり見据え、視界の端には走る仲間の姿。

　川嶋が俺に向かって足を踏み出した瞬間、中に走り込んできたオカへのパス。

　よくぞ走ってた、オカ！

　オカが無人のゴールへ向かってシュート！

　しかし、武蔵西武は今までの相手とは違った。
　無人のゴールへと転がるボールを、相手ボランチ矢部がスライディングで掻き出した。

　ヤスが詰め寄るも、近くにいた七澤がボールを外に蹴り出した。