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痴漢脳小説 ~秋津高校サッカー部~
第9章 秋津高校サッカー部
「なんかご機嫌だな」
「そうか?」

 放課後の練習前。今日は軽めに汗を流して終わりの予定。部室前で軽くストレッチをするヤマは珍しく小さく鼻歌を歌っていた。

「お前確か優勝したら夏ちゃんと、って約束だったんだろ? あれってさ」
「ああ、ダメになったよ」
「…だよな」
「でも、まあいいじゃん。まだ次があるんだし」

 あっけらかんとヤマは言う。負けたショックはどうやらないみたいだ。

「新人戦で優勝したら、って話に変えてもらったんだよ。俺達なら新人戦はいただきでしょ」

 さ~て、練習練習。ヤマの足取りは軽い。


「さてお前ら。次の目標は来月から始まる新人戦だ。他の学校にとっては三年生が抜けた初めての大会になる。
 ウチは元々三年がいないからな。メンバーの入れ替えは基本的にナシ。ここで勝てなかったらお前らクズだぞ」

 グラウンドでは池内監督が相変わらずの口の悪いながらも愛の篭った(と、信じたい)お言葉を下さっている。

 池内に言われるまでもない。俺達は今日から新人戦に向かって動き出す。
 三年生がいなくなった初めての大会。俺達がずっと感じていた学年差のハンデのない初めての大会。
 早くも優勝候補の最有力とか言われて、来週には何と、来月発売のサッカーハイライトという雑誌が取材に来るという。

 俺達も出世したもんだ。

「でも油断はダメだよ」

 そんな浮かれ気分をきっぱりと断ち切ったのは、やっぱりヒデだった。

「強豪校は選手の層も厚いからね。三年が抜けたからと言って弱くなるわけじゃないよ」
「そうですよ。さあ、今日も練習練習!」

 美緒ちゃんが明るい笑顔で締めくくる。

 他の部員も気合の入った顔でグラウンドへ向かう。
 秋高サッカー部は一回の敗戦で空中分解したりはしない。そんないいチームになった。
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