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面影
第6章 家族
- 旭side -
『おはよーございますっ!』
『ん。おはよ。』
隣のデスクに座り、早々に
PCと向き合う棗さん。
今日もピシッと決めたスーツも、
後ろに流すようにセットされた髪も、
そしてそのクールな態度も?
すべてが完璧だ。
さすが笹原棗。
さすが俺の憧れ。
『…いつまで突っ立ってんの。
俺に見惚れてないで仕事やれ。』
『あっはい!すいません!』
見てることバレてたか〜はぁ。
俺としたことが恥ずかしい。
それでもめげずに、
チラリと隣に目をやる俺は、
そこらの女子社員より
根性あるよな。
あ、決して俺はゲイではない。
棗さんが好きなだけなんだ。
カタカタカタカタ…
棗さんはホント俺の憧れ。
棗さんみたいになりたいって
本気で憧れてる。
時間さえあれば棗さんを
盗み見たりするほどに。
カタカタカタカタ…
だから気付いてしまう。
カタカタカタカタ…
ちょっとした変化さえも。
『棗さん、何か今日疲れてます?』
『あぁ。ちょっとな。』
力なく笑う棗さん。
うっすらと目の下にクマを作り、
時々ぼーっとしてるかと
思ったら、思い出したかのように
仕事をやり始める。
ここ最近はずっとこんな調子だ。
棗さんが心に隠してることがあるのは
出会って少しした頃に分かった。
お酒で酔いさえすれば、
少しくらいは話してくれるかと
思って何度か頑張ってみたものの、
今までの収穫はほんの少しだけ。
早瀬さんとは高校以外はずっと
いっしょなこと。
高校は遊びまくっていたこと。
ー 家族は…いないこと。
カタカタカタカタ…
『…よしっ!』
『?』
棗さんの隣に座り、
俺も仕事を始める。
やっぱり、放ってなんかおけない。
俺は棗さんを助けたい。