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面影
第6章 家族
『茉莉花が会いたいって
言うから行ったんだ。
そしたらさ、茉莉花ひどいんだよ。
僕のこと”マサキ”って呼びながら
求めてくるんだ。』
ガクガクと震える私をよそに、
棗は続ける。
『”マサキ”って誰だろうね。
麗は知ってる?』
知ってるよ。
”正樹”さんは棗のお父さん。
『ー僕は、棗なのに。』
そしてあなたがさっきまで
会っていたのは
棗の母親、莉花さんだ。
何も映さない、灰色の瞳で
見つめられると、
私は何も言えなくなる。
いつまでも、
私たちの時計は、
止まったまま。