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第1章 闇の炉ビデオ 製作に至るまでの経緯

不登校や自殺未遂を繰りかえしていた彼女だが、沼田と出会ってからは学校に通い、部活動にも加入し、成績も優秀になる。

これは『テストの答案用紙を沼田に見せると彼が褒めてくれるので嬉しかった』と警察の調書にも書かれている。

後の逮捕の証拠のひとつとなるのが、ユリが沼田の子を身ごもったことである。



沼田も少年時代に親の離婚を経験し、母方に引き取られていたのだが、女手ひとつで懸命に向樹を育てる母にも欠点があった。

母はよく、ストレスや寂しさを紛らわす為にタバコや酒に溺れていた。

高校時代は母が酒の飲み過ぎで自宅の風呂場で倒れていたのを親友の海原(後のもう一人の主犯)と発見し、救急車を呼んで母は意識を取り戻すが、近所には野次馬が溢れ、母は「恥をかかせた」として向樹に相当な暴力を振るっている。

この時、自宅まで救急車を誘導したのは海原である。

それ以降、母が暴れたときや倒れたときは母方の親戚に電話するようになる。

高校生ではあったが、沼田の心は深く傷つき、以後も一生懸命ではある母を愛しつつも、酒で豹変する母を憎み、精神的に歪みが生じた。