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クラス ×イト
第5章 ほころビ 【乾英太2】
「――?」
瀬山くんは、やや面食らったようだった。
コイツ――誰だっけ? とは流石に思わないにしても、僕が声をかけたことが意外だったのは間違いない。
彼は成績優秀で容姿端麗。運動神経にも優れ特にバスケ部での活躍は、度々耳にしていた。スポーツに関心のない僕でさえそうなのだから、きっと相当なもの。
そんな瀬山くんの存在は、クラスの中で僕が最も距離を感じる人。同じ教室で学んでいても何処か『遠くの人』みたいで。可笑しな表現だけど、僕が彼に抱くのはそんな印象。
自分たちを『D3』なんて言ってる僕の方が、一方的に引け目を目を感じてしまっているのだった。
そんな訳もあって同じクラスに在籍しながらも、瀬山くんと話した覚えは殆どなかった。それだから突然話しかけた僕を、彼が妙に感じたとしても全く不思議ではない。
「ああ……こんな場所で、珍しいな。一人なのか?」
瀬山くんにそう訊かれ、僕は頭をフル回転して言葉を探す。その疑問に正直に答えることはできない。
「うん、ちょっとね……。瀬山くんは部活の帰りなの。だけど、それにしては早くない?」
「今日は練習を、早めに切り上げたからな」
「だ、だったらさ……少し、話せないかな」
「俺と――なにを?」
瀬山くんの反応は正しい。明らかに無理を重ねているのは、僕の方だった。
それでも、今更引き下がる訳にもいかないから。僕は自分でも、予期せぬことを口にしていた。
「相談があるんだ。だから……聞いてくれない?」
瀬山くんは、やや面食らったようだった。
コイツ――誰だっけ? とは流石に思わないにしても、僕が声をかけたことが意外だったのは間違いない。
彼は成績優秀で容姿端麗。運動神経にも優れ特にバスケ部での活躍は、度々耳にしていた。スポーツに関心のない僕でさえそうなのだから、きっと相当なもの。
そんな瀬山くんの存在は、クラスの中で僕が最も距離を感じる人。同じ教室で学んでいても何処か『遠くの人』みたいで。可笑しな表現だけど、僕が彼に抱くのはそんな印象。
自分たちを『D3』なんて言ってる僕の方が、一方的に引け目を目を感じてしまっているのだった。
そんな訳もあって同じクラスに在籍しながらも、瀬山くんと話した覚えは殆どなかった。それだから突然話しかけた僕を、彼が妙に感じたとしても全く不思議ではない。
「ああ……こんな場所で、珍しいな。一人なのか?」
瀬山くんにそう訊かれ、僕は頭をフル回転して言葉を探す。その疑問に正直に答えることはできない。
「うん、ちょっとね……。瀬山くんは部活の帰りなの。だけど、それにしては早くない?」
「今日は練習を、早めに切り上げたからな」
「だ、だったらさ……少し、話せないかな」
「俺と――なにを?」
瀬山くんの反応は正しい。明らかに無理を重ねているのは、僕の方だった。
それでも、今更引き下がる訳にもいかないから。僕は自分でも、予期せぬことを口にしていた。
「相談があるんだ。だから……聞いてくれない?」