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クラス ×イト
第5章 ほころビ 【乾英太2】
 それが僕にとって、良いことなのかわからない。でも時間を稼ぐという、当初の目的からすれば幸いと言えた。

 それに親友の西くんの話題に転じたことで、瀬山くんの口調も少し和らいだみたい。

「西が藍山にちょっかい出してるのは、俺も見てるけど。だがあの様子だと、全く相手にされてないだろ。ハハ――でもアイツのことだから、そのくらいじゃヘコんだりはしないだろうな」

 初めて僕の前で笑みを零しながら、瀬山くんはそんな風に話してくれた。

「だけど、実際どうなのかな? やっぱり、西くんは――藍山のこと好きなんだよね」

 そうなれば僕も、自然と自分の気になることを口にする。

「さあ――本人に確かめた訳じゃないから。だけど、お前がそれを気にしたって、あまり意味ないんじゃないのか?」

「そう……なんだけどさ。僕は西くんみたいに、気軽に話しかけたりできなくって……」

 その時、僕が何気に選んでいた言葉に、瀬山くんは厳しい反応を見せた。

「どうして――西が気軽だって、決めつけるんだよ」

「え……?」

「もしかしたら、アイツなりに必死かもしれない。そうは考えないのか?」

「あ……」

 刺すような瀬山くんの視線を受け、僕は言葉を出せない。ぐうの音も出ないとは、きっとこのことだろう。

 弱さを曝け出し泣き言を口にしてる自分。そんな姿を瀬山くんに看破された気がして、僕は顔から火が出そうなくらい恥ずかしかった。
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