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クラス ×イト
第5章 ほころビ 【乾英太2】
自己嫌悪に陥いった僕は、この場所からすぐにでも逃げ出したい気分。だけど、暫く間があり、その後だった。
「悪い――つい言い過ぎたかな」
瀬山くんは静かな口調で言うと、僕にそっと微笑みかける。
何故だろう。その表情を見てると、不思議と癒される気がしていた。僕はほっと心を落ち着かせて、自然と言葉が口をついた。
「いや……僕の方こそゴメン。あと話を聞いてくれて、ありがとね。そうだ……結局は自分自身の問題なんだ」
「もう――相談はいいのか?」
「うん……僕なりに頑張ってみるよ」
この時点で僕の頭は、すっかり三生のことを失念していた。時間を稼ぐことも忘れ、話を終わらせようとしている。
そしたら、瀬山くんは何処か遠い目をして、こんなことを言った。
「俺――ちょっとだけ、お前が羨ましいよ」
「え……?」
瀬山くんが僕を……? 彼は皮肉や嘘を言ってる訳じゃない。ここまで話していて、僕にはそれがわかる。だからこそ、そう言われたことはとても意外過ぎた。
今の彼の切れ長の瞳は、何かを捉えているようでもあり、それでいながら、何かを見失っているようにも思える。その横顔を見つめ僕は漠然と感じる。
瀬山宗助は『遠くの人』ではなくて――『遠くを見てる、人』なのだと――。
彼の発言を不思議に思い、やや呆然としていた時だった。
「――!?」
僕はふと視線を送った先に、三生の後姿を発見。既に赤緒さんとの話は終わったらしい。でも三生は僕の方に戻る様子もなく、あらぬ方向にフラフラと歩き出していた。
僕は慌てて席を立つと、瀬山くんに告げる。
「あの――僕、もう行くね」
「ああ……」
ややきょとんとした瀬山くんを席に残し、僕は三生の後を追おうと走り出す。その僕の背に、瀬山くんがこんな声をかけてきた。
「乾――陰ながら、応援してるよ」
「あ、うん。――ありがとう」
瀬山くんが、どんな気持ちでそう言ったのか。
この時の僕は、それを深く考えようとはしなかった。
「悪い――つい言い過ぎたかな」
瀬山くんは静かな口調で言うと、僕にそっと微笑みかける。
何故だろう。その表情を見てると、不思議と癒される気がしていた。僕はほっと心を落ち着かせて、自然と言葉が口をついた。
「いや……僕の方こそゴメン。あと話を聞いてくれて、ありがとね。そうだ……結局は自分自身の問題なんだ」
「もう――相談はいいのか?」
「うん……僕なりに頑張ってみるよ」
この時点で僕の頭は、すっかり三生のことを失念していた。時間を稼ぐことも忘れ、話を終わらせようとしている。
そしたら、瀬山くんは何処か遠い目をして、こんなことを言った。
「俺――ちょっとだけ、お前が羨ましいよ」
「え……?」
瀬山くんが僕を……? 彼は皮肉や嘘を言ってる訳じゃない。ここまで話していて、僕にはそれがわかる。だからこそ、そう言われたことはとても意外過ぎた。
今の彼の切れ長の瞳は、何かを捉えているようでもあり、それでいながら、何かを見失っているようにも思える。その横顔を見つめ僕は漠然と感じる。
瀬山宗助は『遠くの人』ではなくて――『遠くを見てる、人』なのだと――。
彼の発言を不思議に思い、やや呆然としていた時だった。
「――!?」
僕はふと視線を送った先に、三生の後姿を発見。既に赤緒さんとの話は終わったらしい。でも三生は僕の方に戻る様子もなく、あらぬ方向にフラフラと歩き出していた。
僕は慌てて席を立つと、瀬山くんに告げる。
「あの――僕、もう行くね」
「ああ……」
ややきょとんとした瀬山くんを席に残し、僕は三生の後を追おうと走り出す。その僕の背に、瀬山くんがこんな声をかけてきた。
「乾――陰ながら、応援してるよ」
「あ、うん。――ありがとう」
瀬山くんが、どんな気持ちでそう言ったのか。
この時の僕は、それを深く考えようとはしなかった。