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クラス ×イト
第5章 ほころビ 【乾英太2】
 僕らは歩道に足を止めて、話し始めていた。

「だけど――赤緒さんは?」

「うん。はっきり言って、相手にもされなかったよ。赤緒さんは、迷惑そうに僕を追い払ったんだ」

「だったら、もう……」

「それでも、気持ちはまるで変わらない。僕はもう、忘れることができないんだ」

「忘れられないって――何を?」

「あの時――僕を包み込んだ、彼女の口の中の温もり」

 恍惚の表情を浮かべ、三生は遠い目をして言う。

 その様子は、いつもの三生からあまりに逸脱している。しかも口にしたのが、そんな話だったから。今日一日そんな三生に付き合っていた僕は、正直に言えば呆れ返っていたのだと思う。

「結局はソレなの? 三生、少し頭を冷やした方がいいよ」

 すると三生は、僕を少し小馬鹿にしたような顔をした。

「まあ……英太くんには、わからないだろうけど」

 その顔とその言葉が、僕はカッとさせる。

「バ、バカなんじゃないの? ズボンもパンツも下ろされちゃってさ。あんなの暴力と同じじゃないか! その癖、気持ち良かったものだから、赤緒さんが好きって――そんなのホントの好きじゃないからね!」

 興奮する僕の言葉を聞き入れ。三生は逆に涼しい顔をして、僕にこう訊き返した。

「じゃあ、ホントの好きってどんなの?」

「そ、それは……」

 僕は思わず、言葉を詰まらせている。
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