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クラス ×イト
第6章 なりゆキ 【澤田裕樹】
 護の奴が何となく浮かれてるように見えたのは、ここ数日のことだった。

「最近、やけに上機嫌だな。いいことでも、あったのかよ?」

 そう感じた俺が、不意にそう訊いたのがついさっき。

「別に、何でもねーけど」

 惚けてそう言った割には、護は堪え切れずにニヤついている。

 それで更に問い詰めると(つーか、護が聞いてほしそうだし)、護はさっきのような前置きをしてから俺に話し始めた。

「俺――実はちょっと前から、佳奈と付き合っててさ」

「へ、へえ……まあ、そうだとは思ってたけど」

 俺の目だって節穴じゃない。いつも近くにいれば、そのくらいは察していたつもりだ。だがそれでも――そう聞けば、やはり止めを刺された気分にもなる。

 そんな俺にしてみれば、この後の護の話は『死体を蹴る』も同義。

「ああ見えて佳奈って、意外と硬いつーかさ。今までは、キス止まりだったわけ。だけど今週アイツの家に行ったら、たまたまその日は親が留守。これはもう、ヤルしかねーって普通に思うだろ。それでさ――」

 得意げな護の話は、途中から俺の耳には届かなくなった。俺の身体が無意識に防御本能を発揮し、それを拒絶していた。だが既に、それも無意味。俺は十分なほどに、もう理解しきっていた。

 俺の頭はクラクラと揺れて、意識を保っていられたのが不思議なくらいに……。
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