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クラス ×イト
第6章 なりゆキ 【澤田裕樹】
「ねえ、裕樹――待っててば!」

 カラオケボックスを出てると、足早に歩く俺に茜が並びかける。

「やっぱさぁ、なぁんか変だよねー。今日の裕樹」

「だから、何でもねーって!」

 妙に纏わりつく茜が、はっきり言って俺はウザかった。

 すると、茜は不意に足を止め、何か閃いた感じで言う。

「あ、そっか!」

 俺は振り向き――

「なにがだ?」

 と、一応は訊いてみた。

「あ、でもなぁ。やっぱ、気のせいかな」

「気になるから、言ってみろよ」

「だけどぉ、私の勘違いかも……」

「勘違いでもいいから、とにかく言ってみ」

「ええっ、でもぉ、違ってても――怒らない?」

 ああっ、イライラする! 俺は怒鳴りそうになるのをグッと堪えると、改めて茜に言った。

「怒らねーから。ホラ、さっさと話せ」

「じゃあ、言うね。裕樹ってさ――」

 茜は大きな瞳で俺をじっと見据えて――


「佳奈のこと、好きなの?」


 俺の一番触れられたくない部分を、ものの見事に貫いた。


「ちがっ……バ、バカ……お前っ、なに言って……」


 俺は口は誤魔化そうとするほどに、この上もなく空回りする。

 上手く喋れないもどかしさがスイッチだったように、感情が一気に溢れ出しそうになると、俺はもうそれを抑えられなかった。

 そんな俺を見て、茜が呟く。


「裕樹……泣いてるの?」


 見れば、わかんだろ? イチイチ訊くな……この、バカ女……。
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