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クラス ×イト
第6章 なりゆキ 【澤田裕樹】
 茜の前であることも忘れ、情けなく涙を流してから――二十分後。

「……」

 気がつけば俺は、見知らぬ部屋に来ていた。

 あの時、その場に崩れそうな俺の手を引くと――

「そんなに、落ち込まないで。代わりに私――元気づけてあげる」

 確かそんなことを言いながら、茜が連れて来たのがこの部屋だった。

 茜の家ではなく、そこはワンルームのアパート。家具は一通り揃っていて、生活臭も漂っている。間違いなく、何者かが暮らしている部屋だ。

 俺はベットの上に腰掛け――

「なあ、茜。ココ――誰の部屋?」

 慣れた様子で、冷蔵庫から飲み物を出してる茜に訊ねる。

「うん。ちょっとした、知り合いの部屋なんだ。私、自由に使っていいことになってるの」

 それって、どんな知り合いだよ……。俺は改めて、部屋の中をキョロキョロと見渡す。

 床に何気なく転がるのは、ギターだったりスケボーだったり。本棚に並ぶマンガの趣味。壁に貼ってあるバイクのポスター。その他、諸々。どこをどう見ても、男の匂いしかしない……。

「アハハハ! そんなに怪しまなくて平気だよ。その人、当分戻らないから。遠慮しないで、くつろいでね」

 茜はテーブルにジュースを注いだグラスを置きながら、そんな風に言ってるけど。普通に無理だろ。こんな処で、くつろげる訳がない。

「いや……やっぱ、帰る」

 俺がそう言って、立ち上がろうとした時――。

「だぁめ!」

 茜が俺に飛びつくと、二人の身体がベッドの上に折り重なった。
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