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クラス ×イト
第6章 なりゆキ 【澤田裕樹】

    ※    ※


 特に待ち合わせ場所なんて、深く考えていなかったから、俺は昨日のメールで『学校で待ってる』と告げた。

 土曜日の学校には、運動部の連中が練習に励んでいる姿があり。俺はグラウンドの端で、何となくその様子を眺めている。

 校舎の時計台を見ると、もう約束の午後の三時を二十分以上回っている。そう言えばあのボロ時計は、五分くらい進んでたっけ。だったらまだ、十五分過ぎただけだろ。

 いや……俺はわかってる。約束なんて言ったけど、それは俺の独りよがりだってこと。昨夜のメールに、返信はなかった。たぶん夜まで待っても、それは無駄だ。

「……」

 頭ではそう思いながらも、俺はその場を立ち去らない。この先どれほど待ったとしても、待ちくたびれるなんてことはない。何故ならドキドキと高鳴りっぱなしの心臓は、全く鎮まろうとしてくれない。

 来るはずもないその姿を想像しながら、俺は退屈しそうもなかった。

 しかし、それから暫く待つと――。


「澤田……」

 その微かな声を耳にして、俺は振り向く。

「佳奈――来て、くれたのか」

 その時、俺の心音が更に高まった。だが、何とか態度には表さずに済んでいる。言葉も思ったより自然に出せた方だ。

「だって、一応は気になるし。一体、なんなの? あの妙にマジなトーンのメール……」

「あ、ああ……いきなりで、悪かったな」

「それで――私に話って?」

 佳奈は小さくため息をつきながら、俺に並んでグラウンドを眺めた。
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