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クラス ×イト
第7章 アらガう 【堂林亮伍】
その顔を見て、俺は呟く。
「ああ、そうだったな」
「なに?」
「瀬山に一番甘いのは、お前だ」
「エヘヘ、そうなのかなぁ」
「……」
俺がマンガ以外で「エヘヘ」と笑う奴を見たのは、海藤美和というこの女が初めてだ。
眼鏡をかけ、昔っぽいおさげ髪。鼻の周りのソバカス。いつもホンワカと笑ってる海藤は、今時珍しいタイプのようだ。良く言えば、素朴……?
だが俺に言わせれば、チャラチャラと飾り立てた女より、よっぽどマシには見える。これは単純な比較の上での、すなわち個人の感想に過ぎないが……。
去年の県大会の後、当バスケ部にはマネージャー希望の女子が殺到している。その全員が、大会で鮮烈な活躍をみせた瀬山が目当てなのは明白だ。その証拠に――
『瀬山くんってさ、同じクラスの赤緒さんと付き合ってるみたい……』
そんな噂が女子たちの間で囁かれ始めた途端、マネージャー希望者は蜘蛛の子を散らすように姿を消していった。残ったのは、たった一人。それが海藤だった。
俺は関心などないが、瀬山が赤緒と付き合っているというのは、たぶん事実。いかに派手な女が苦手な俺でも、赤緒に『白旗』を上げた女子たちの気持ちは何となく理解できた。
傍目から見ても、瀬山と赤緒の並びはそう思わせるくらいバッチリとハマっている。
だが、この海藤美和はそれにめげる風もなく、今でもマネージャーを続けていた。むさ苦しい男子部員に対し、たった一人の女子マネ。決して楽な仕事ではなかったはず。その姿はこんな俺の目にさえ、健気にも映っていた。
それだけ、瀬山への想いが強いってことか……?
俺は不意にその顔を見上げる。
「ただの、憧れだよ」
海藤は遠くを見つめて、そう言った。
「ああ、そうだったな」
「なに?」
「瀬山に一番甘いのは、お前だ」
「エヘヘ、そうなのかなぁ」
「……」
俺がマンガ以外で「エヘヘ」と笑う奴を見たのは、海藤美和というこの女が初めてだ。
眼鏡をかけ、昔っぽいおさげ髪。鼻の周りのソバカス。いつもホンワカと笑ってる海藤は、今時珍しいタイプのようだ。良く言えば、素朴……?
だが俺に言わせれば、チャラチャラと飾り立てた女より、よっぽどマシには見える。これは単純な比較の上での、すなわち個人の感想に過ぎないが……。
去年の県大会の後、当バスケ部にはマネージャー希望の女子が殺到している。その全員が、大会で鮮烈な活躍をみせた瀬山が目当てなのは明白だ。その証拠に――
『瀬山くんってさ、同じクラスの赤緒さんと付き合ってるみたい……』
そんな噂が女子たちの間で囁かれ始めた途端、マネージャー希望者は蜘蛛の子を散らすように姿を消していった。残ったのは、たった一人。それが海藤だった。
俺は関心などないが、瀬山が赤緒と付き合っているというのは、たぶん事実。いかに派手な女が苦手な俺でも、赤緒に『白旗』を上げた女子たちの気持ちは何となく理解できた。
傍目から見ても、瀬山と赤緒の並びはそう思わせるくらいバッチリとハマっている。
だが、この海藤美和はそれにめげる風もなく、今でもマネージャーを続けていた。むさ苦しい男子部員に対し、たった一人の女子マネ。決して楽な仕事ではなかったはず。その姿はこんな俺の目にさえ、健気にも映っていた。
それだけ、瀬山への想いが強いってことか……?
俺は不意にその顔を見上げる。
「ただの、憧れだよ」
海藤は遠くを見つめて、そう言った。