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クラス ×イト
第2章 だメンず 【乾英太1】
「畜生……一瞬、期待しちまっただろ」

 佐倉先生が去ると、要二はそう呟いた。その顔を見て――

「なるほどね……」

 僕はさっきのお返しとばかりに、ニヤリと笑う。

「な、なんだよ」

「ううん、別に。だけど――そうか、要二が年上好みとはね」

「バカ! 誰もそんなこと言ってねーだろ!」

 そこまで取り乱せば、流石に僕にだってわかるよ。だけど要二のその気持ちを、からかうつもりなんて僕にあるはずもなく。

 だから僕は、こう言ったんだ。


「うん。大丈夫だよ」

「大丈夫……って?」

「あ、いや。なんとなく、そんな感じなんだ」

「お前って……たまに変だよな」

 要二は不思議そうに、僕の顔を見ている。それも仕方がないだろう。何故そんな風に言ったのか、僕だってよくわかっていない。

 だけど、少しだけ昂揚していたことは確かみたいだった。

 そうだよ。僕ら『D3』だって、恋とかしてみたり。報われないかも知れないけど、それがいけないことだなんて、誰にも言えないはずだ。

 いつもなら、矮小な世界に閉じ籠っている三人。この日の昼休みは、ちょっとだけ視野を広めた気がしていて――。

 僕はそれだけのことが、たぶん嬉しかったんだと思う。

 だけどそれは、錯覚に過ぎなかった。だって僕は、何ら行動を起こしてはいない。この時点では、まだ何も始まってなどいなかった。

 それでも――何かの前触れのように感じていたのは、確かだったかもしれない。


 只――そんな予感があんな形で当たるなんて、考えてもいなかった。

 それは同じの日の放課後に、この教室であった――ある出来事のこと。

 それはこのクラスに、小さな歪を生むきっかけだったのかもしれない。


 そして僕自信も、大きな衝撃を受けることになるのだ。

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